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【公認心理師試験対策】一時保護【後編】

 前回の記事では、通告を受けてから児童相談所がどのような調査を行うのか、調査の基準や法的な根拠は何か、といった部分を解説しました。

 それでは、今回は、児童相談所による調査が実施された後のステップを見ていきたいと思います。

 

■ポイント■


【調査結果の判定】

 児童相談所職員による詳細な調査の結果は、次のフローチャートなどを参考に、評価されます。

 フローチャートで示されているように、状況の切迫度合い重大な結果の有無などを根拠に、緊急一時保護一時保護一時保護の検討保護者、子どもへの援助と対応が分かれていきます。
 このフローは、2018年の過去問で問われました。図を丸ごと覚えてしまうくらいで良いでしょう。詳細を下の記事で紹介していますので、参考にご覧ください。

psychobank.hatenablog.com

 

【一時保護が始まったら】

 一時保護が始まると、まず、保護者や子どもに対して一時保護の目的、期間などを書面で説明します。虐待をしている保護者に対して、「虐待の告知」を行うことは、一時保護における重要なプロセスです。
 また、在宅援助をしている段階で一時保護に至る場合もあります。ケースバイケースではありますが、そうした場合は援助の担当者以外から一時保護を説明することが望ましいとされています。

虐待の告知

 児童への保護者のかかわりが不適切であり、子どもの養育に悪影響を及ぼすという点を、保護者に対して、明確に指摘すること。ただし、虐待の告知は、保護者を責める目的ではなく、子どもへの養育態度の変容を目的としているので、心理職は、保護者支援の一環として伝えるよう努めなければならない。

 虐待の告知を明確に行わないことにより、虐待環境が改善しない、一時保護による子どもとの分離に対して、保護者の苦痛や訴えが強まるという問題も生じる。 

 
 また、子どもに対しても保護者と同様に一時保護の目的を説明しなければなりません。子どもは、通学先から家に帰ることなく一時保護となることもあります。生活の変化なども含め、動揺が大きいことを想定し、丁寧に目的、今後の見通しを伝えます。


【入所時の子どもへの対応】

 いざ、入所する段階になると、児童相談所はまず子どもの健康状態を把握します。子どもの状態確認は、子ども自身が受けてきた虐待によって異なります。怪我の確認では、証拠を記録する必要があります。また、栄養状態の確認、産婦人科の受診が必要になる場合もあります。
 いずれの場合も、子どもが十分に安心できる環境で、十分な説明の元で行わなければなりません。

【保護者の権利】

 一時保護は、保護者の同意の必要ない強力な行政処分です。それだけに、保護者の権利が侵害されるおそれもあります。そうした場合の保護者を救済する措置として、行政不服審査法に基づいて保護者が不服申し立てをする制度があります。
 児童相談所は、一時保護を開始する際、保護者に対して、不服申し立ての権利があることを説明する必要があります。

【一時保護の期間】

 一時保護は、「一時」としている通り、期間の定めがある措置です。2週間から2か月を目途に実施されます。
 児童福祉法第33条では、一時保護は「2か月」を超えることができないとされています。しかし、2か月が経過しても、児童の養育環境が改善しない場合もあります。その場合は、「一時保護の延長」という措置が取られます。

 

【一時保護の延長】


 一時保護は、児童相談所または都道府県知事「必要があると認めるとき」に延長することができます。
 とはいえ、最初に記した通り、一時保護は強力な権限です。児童相談所長の判断にも一定の制限が必要になります。保護(親権)者が同意している場合は、児童相談所長の判断で延長できますが、保護(親権)者の同意がない場合は、2か月ごとに家庭裁判所の承認が必要となります。


【一時保護後の継続的支援】


 一時保護は、児童の心身を保護する措置であるとともに、児童のその後の処遇を決定するための期間でもあります。一時保護を終えた後の処遇は、「在宅支援」「代替養育」に分けられます。

・在宅支援

 基本的に一時保護を終えた9割在宅支援となります。
 在宅支援が決まると、児童の情報は「要保護児童対策地域協議会」に共有され、地域で連携して支援が継続されることになります。
 



・代替養育(委託一時保護)

 一時保護の結果、在宅での支援が難しいと判断された場合は、代替養育という措置が取られます。
 代替養育には、児童相談所に併設されている一時保護所や、児童養護施設乳児院、ファミリーホーム、里親などが含まれます。
 また、虐待が発覚しても、すぐに児童相談所が保護できない遠隔地で起きた虐待の場合などには、委託一時保護として、児童養護施設などで児童が保護される場合もあります。

 

  • 【一時保護の課題】

 一時保護は、保護期間の長期化が課題として指摘されています。また、長期化に伴って、さまざまな背景を持つ児童が同時に同じ環境で暮らすことになる点も課題として指摘されています。