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公認心理師過去問解説 2018年午前 第三問 

 

目次

 

 本日は、公認心理師試験2018年午前第三問を見ていきたいと思います。
 まずは、問題を見てみましょう。

【問題】

14歳の女子A、中学生。摂食障害があり、精神科に通院中である。最近、急激にやせが進み、中学校を休みがちになった。Aの母親と担任教師から相談を受けた公認心理師であるスクールカウンセラーが、Aの学校生活や心身の健康を支援するにあたり、指示を受けるべき者として、最も適切なものを1つ選べ。


1 .栄養士 2 .学校長 3 .主治医 4 .養護教諭 5 .教育委員会

 

【答え】

3

 

【ポイント】

 問題を解くときに、頭にとどめておくべきポイントは、次の三点かなと思います。
 ・摂食障害精神科通院中
 ・最近、急激にやせが進んだ
 ・要支援者の関係者からの相談
 問題の内容や選択肢によって、回答に影響を与える要素としては、こんなところでしょうか。A本人は未治療だけど「親には言わないで欲しい」と言われている、とかになるとまた答えも変わりますからね。
 ただし、問題の最後でAの学校生活や心身の支援において「指示を受けるべき者」として、「最も適切」とあります。また、3以外の選択肢は、栄養士、学校長、養護教諭教育委員会ですから、選択肢を見れば簡単に回答を3に限定することができるでしょう。
 

【解説】

 一応、何を理由に回答を主治医と絞るか検討してみましょう。理由としては、例えば次のような理由が挙げられます。

 ・身体疾患の可能性について検討が必要なこと
 ・すでに精神科通院中で病状に急激な変化がみられること
 ・公認心理師が支援を行うことが適切かどうか不明であること
 ・急激にやせが進んだとは言え、緊急性が不明であり、情報共有に関するAの意思を確認できていないこと
 ・緊急性が明確だったとしても、③以外はAの意思を確認できていない状況で、情報を共有する対象として不適当であること
 ・公認心理師法第42条で「支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」と決められていること

 などなど、問題文が簡素なだけに考えられる理由はたくさん出てきます。ただ、この問題は、最後にあげた公認心理師法第42条を理解しているかどうかを問うているだけだと思うので、答えは即答で③として良いでしょう。
 公認心理師法第42条については、過去の記事でも説明していますので、併せてご覧ください。

 
 ちなみに、問題の解説とは少し別になりますが、この問題で出てくる摂食障害は重要な疾患なので、少し解説しておきます。詳細な解説はまた別の機会にしたいと思います。

摂食障害とは

 摂食行動の異常を主症状とする、神経性やせ症神経性過食症特定不能の3タイプに累計される。
 児童期~青年期を好発時期として、圧倒的に女性の罹患率が高い病気で、やせ症と過食症は、肥満への恐怖や痩身願望といった体型へのこだわりと、やせるために「食べずに痩せる」「自己誘発性嘔吐や下剤などで排出する」といった手段によって分類される。DSM-5では、痩身願望などの体型へのこだわりが無く、食事の摂取が不十分で痩せてしまう「回避・制限性食物摂取症」が追加された。
 摂食障害は、BMIの数値が13を下回るほど危険な体重減少を伴うこともあり、致死率の高い精神疾患とされている。

 

 

 この問題の回答は、試験では30秒もかけずに答えるような問題です。初回試験は、簡単な問題が多かったことから、今後このような問題が出ることは少ないのではないかと思います。ただ、前提となる知識は変わらないので、こうした問題を解くことから基礎的な知識を固めていきましょう。