本日は、公認心理師試験2018年午前第二問を見ていきたいと思います。テーマは、緊急一時保護についてです。 まずは、問題を見てみましょう。
【問題】
児童虐待について、緊急一時保護を最も検討すべき事例を1つ選べ。
1 .重大な結果の可能性があり、繰り返す可能性がある。
2 .子どもは保護を求めていないが、すでに重大な結果がある。
3 .重大な結果は出ていないが、子どもに明確な影響が出ている。
4 .子どもは保護を求めていないが、保護者が虐待を行うリスクがある。
5 .子どもが保護を求めているが、子どもが訴える状況が差し迫ってはいない。
【答え】
2
【解説】
やはりこの問題も、知識問題ですね。この問題は、文緊急一時保護を含めた、一時保護のシステムを理解できているかが問われています。
一時保護については、別の記事でまとめています。ぜひご覧ください。
一時保護の目的は、子どもの生命の安全、子どもの福祉を確保し、子どもの権利が脅かされる状態から保護することです。一時保護は、原則として保護者の同意が求められます。しかし、緊急一時保護は、その中でも緊急性がある場合に、児童相談所長の判断で児童を保護することができるという仕組みです。
大変強い権限の行使になりますので、明確な基準、手続きを基に、十分に吟味した上で、実行されなければなりません。厚生労働省は、「子ども虐待対応・アセスメントフローチャート」として、一時保護を検討するときの対応として求められる流れを次のような図で示しています。
この問題は、このフローチャートが頭に入っているかを確認している「だけ」と言っても良いほど、このフローチャートを知っていれば解けてしまいます。
厚生労働省 子ども対応の手引きより、「子ども虐待対応・アセスメントフローチャート」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv12/05.html)(リンク先では、ページ末尾に掲載)
これを見れば、緊急一時保護に至る条件として、選択肢の2つ目「子どもは保護を求めていないが、すでに重大な結果がある」が正解だと分かります。
他の選択肢に関しても、このフローチャートに記載されていますから、問題の作成者は完全にこのフローチャートを意識して問題を作ったのだろうと思います。
答えが分かったところで、今度は他の選択肢を図を見ながら確認するとより勉強になります。早速、見てみましょう。
●選択肢1 重大な結果の可能性があり、繰り返す可能性がある。
フローチャートを④→⑤の順に見ていくと、1が示しているのは「発生前の一時保護を検討」になります。緊急一時保護の対象ではないため不正解です。
●選択肢3 重大な結果は出ていないが、子どもに明確な影響が出ている。
これは、フローチャートを③→④→⑥と確認すると「集中的な援助、場合によっては一時保護を検討」に該当するのだと分かります。一時保護が検討される場合はあっても、緊急一時保護の対象ではありません。
●選択肢4 子どもは保護を求めていないが、保護者が虐待を行うリスクがある。
これも、①→③→④→⑥→⑦と見ていくと、選択肢3と同じ「集中的な援助、場合によっては一時保護を検討」です。
●選択肢5 子どもが保護を求めているが、子どもの訴える状況が差し迫ってはいない。
問題の作成者は、この選択肢と2番で悩ませたかったのかな、と感じます。この内容だけでは、結果は出ません。フローチャート③の部分で「すでに重大な結果がある」のだとすれば、緊急一時保護案件になるためです。
仮にこの選択肢と、選択肢2で迷ったとしても、選択肢2の方で「すでに重大な結果がある」という選択肢が出ています。比較すれば「緊急一時保護を最も検討すべき事例」という観点から選択肢5は不正解となります。
【他の解き方】
まずは、問題から児童虐待における、緊急一時保護の要件を問われていることはわかります。
仮に、緊急一時保護が何なのか全く分からなかったとしても、「虐待された児童を緊急に保護すること」と考えて、保護が必要な状態にありそうな状況で検討すると、「すでに重大な結果がある」という項目が最も優先度の高い項目だろうということは容易に選べてしまいます。
【まとめ】
福祉領域での実務面で非常に重要になる関係行政論は、臨床心理を学んできた臨床心理士が暗記しようとしても、難しい分野の一つです。
そんな時は、今回ご紹介したようなフローチャートを基に、いろいろな事例をフローチャートに当てはめてみる経験を通して、基本的な対応の流れを理解する方法が勉強になります。
こうした基本的な対応の流れは、各領域で明確にフローチャート化されていることが多いため、公認心理師試験に限らず、心理の試験に出されやすい内容です。勉強を進める際も、フローチャートになっていたら、「すべてのフローを追ってみる」という気持ちで、ぜひお試しください。