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書籍紹介2『その心理臨床、大丈夫?心理臨床実践のポイント』

 本日は、書籍『その心理臨床、大丈夫?心理臨床実践のポイント』をご紹介したいと思います。タイトルの通り、「今一度立ち止まって心理実践を振り返りましょう」という内容です。

その心理臨床,大丈夫?---心理臨床実践のポイント

 心理職として仕事を始めたばかりの頃は、資格を取り、徐々に心理支援に慣れたと錯覚してしまうなど、心理職として危険な実践をしてしまう恐れが高い時期でもあります。
 そこで、本書では、心理職が直面しやすい困難を二部構成で解説してくれています
 まず前半の構成として、若手心理職に対して2名のベテラン心理職がSVを行う様子を、それぞれSVそのままに対話形式で紹介しています。
 専門分野の異なるスーパーバイザーによって、1つのケースを複合的に理解することができます。同時に、スーパーバイザーが違っても、共通する大事なポイントを理解することができます
 また、スーパーバイジーとして登場する若手心理職も年次が異なります。そのため、専門職としての技術的成熟度(機能コンピテンシー、臨床実践への姿勢(基盤コンピテンシーに差があります。スーパーバイザーは、そうした若手心理職の専門家としての発達段階に応じて丁寧なコメントを返しています。スーパーバイザーの姿勢から、日ごろ、クライアントにどう向き合っているのかが伝わり、それだけでも参考になると思います。
 そして、書籍の後半では、岩壁先生や岩倉先生など、ベテラン心理職で経験豊富な先生方が、若手が直面しやすい困難を丁寧に解説してくれています。前半では、困難自体が、後半では困難に対する対処が説明されているため、本書を読み進めるだけで「今の自分に何が足りないのか」「どうしたら良いのか」についてじっくりと考えることが出来るようになっています。
 

【対象】
 心理職1年目~10年目くらいの方にお勧めですが、10年目以降は、先述した通り、スーパーバイザー側の視点で読むこともできます。とても勉強になるため、何度も読み返せる書籍だなと感じています。

【感想】
 本書で登場してくる若手心理職は、SVを受ける際のケース記録の書き方や着眼点がしっかりしています。うちの若手にもこの本を読んでもらおうと思い、本棚にそっと置いておきました。
 また、本書の編者の一人である中村菜々子先生は、以前学会で挨拶させていただいたことがありますが、少し話しただけで聡明さを感じさせるような方でした。周囲からの評判も高く、そういった面でも私は安心して読めました。
 後半に名を連ねる先生方もまた、大変経験豊富で優秀な先生方です。記事で紹介するにあたり、改めて読みましたが、4月から心理職として働き始めた方に安心して読んでいただきたいお勧めの1冊となっています。
 興味のある方はぜひお読みください。